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極楽鳥花植物園 Strelitzia Botanical Garden

ストレリチアの紹介 このページではストレリチアの輪郭を記載してあります。

一般的な花

ストレリチアは非常に変わった植物である。

一般の方にとって花と言えば、茎の中心からつぼみが上がってきて、やがて放射状に花びらが開くいわゆる丸い花。例えばキク、バラ、カーネーション等がお馴染みです。冠婚葬祭で飾られる盛り花でも、花束やブーケでも同様です。

その様な花に慣れた目で初めてストレリチアの花を見たとき、「世の中にこんな花があったのか!」、また「なんて言う花なんだ!」と誰もが驚き、心を掻き立てる、非常に強い印象を与える花であると言えます。

まるで鳥のくちばしの様な形の花に鮮やかなオレンジ色の花、、大きな濃い緑色の葉、がっしりとした株立ち等それらは熱帯のジャングルを彷彿とさせる。そしてこの植物を自分自身で育ててみたい、この花を咲かせてみたいと思わせます。それと同時に性質が弱いのではないか、特別な設備が必要なのではないか、とも思わせる。

しかし、実際に一般の花屋や園芸店でストレリチアの苗や株を目にする機会はほとんど無い。また本屋には育て方の本も無く、園芸雑誌にも載っていない。情報が極端に少なく、思いだけで終わってしまう。

それでも世の中には物好きと言われる人間がいる。植物の場合、その種類だけ専門家がいると言っても過言ではない。ストレリチアでも例外ではなく、趣味の範囲に止まらずこの植物にのめり込んでしまい、気が付いたら30年以上携わっている私が、実際にどの様なものなのか、以下に紹介する。

※器官の名称、個体差等は、「形態」参照。

南アフリカにて、路地植えの黄花レギネー種

主役になる花である。

我々が切り花を飾るとき一般的には主になるものと脇になるものを組合わせる事が多い。主のものは花が大きいもの、丈が高いもの等。球根なら百合やダリア、グラジオラス等。脇のものは花や枝が小さい、細かいものが多い。かすみ草、孔雀アスター、その他、アスパラガス等の葉物類。

ストレリチアは言うまでもなく主役になりうる存在である。太く長い花茎、くちばし状で、鮮やかなオレンジ色の花は人の目を引きつける。特に後に紹介する優良系統の優良花の場合は、それ自体がすばらしいので、脇のものがあるとかえって邪魔な存在になってしまう程である。花が主で葉が脇、それ以外必要無い。それほど個性が強いと言えよう。

しかし、熱帯植物というと、「寒さに弱いのではないか」とか、「育て方が難しいのではないか」と考えがちですが、この植物は難しくない。水も肥料も温度も適当で良く、病害虫もほとんど心配無い。日に何回も見回って細かく観察する様な神経を使う植物では無い。他の一般的な草花より余程簡単です。逆にストレリチアを育てられない人は他のどの植物も育てられないと言えるでしょう。

日本で栽培するとき、一つ問題になるのは冬の寒さだが、近年の暖冬傾向や、住宅の機密性、断熱性が高まり、寒冷地であってもストレリチアを越冬させたり、花を咲かせる事は難しくなくなった。春、霜の心配がなくなったら外に出し、晩秋、霜の心配が出てきたら取り込めば良い。もし、無霜地域であれば地植えで楽しめる。地植えのストレリチアは水やり管理から解放されることから、更に手が掛からず、伸び伸びと育ち、力一杯の花を咲かせる。草姿が美しい。ストレリチアは花の無い時期でも草姿が美しいので観葉植物としても一級品です。大きく育った株の直立した太い葉柄の先に、濃い緑色で肉厚の大きな葉を付けている様は見る者を圧倒する。また洋花にしては和室に置いても違和感が無い。観葉植物と鉢花の両方の魅力を併せ持った植物と考えれば魅力は大きい。

※詳細な栽培管理は、「育て方」参照。

南アフリカ・フラーズベイにて

南アフリカ共和国原産”ストレリチア科”、常緑多年生植物です。

以前にはEngler(Schumann,1,900)とEngler & Prantl(Winkler,1,930)によるによる古い分類法では、ストレリチア属はバショウ科とされてきたが、中井(1,941)とHutchinson(1,959)による新しい分類法の取り扱いではバショウはこの科の中のただ一つの属であるべきであると考えられ、ストレリチアはストレリチア科(Strelitziaceae)に位置付けられる。

このStrelitziaceaeは、トムリンソン(Tomlinson,1,962)により、自然に実在する物として、分類学者に長く承認される単子葉植物の「目」として独立させられる独特なScitamineaeの最も根元的な科であるべきであると考えられている。(Van de Venter,1,974)植物学上最も新しい分類によれば、ストレリチア科には2つの無茎種と3つの有茎種を含む。

ストレリチアの栽培と研究 鈴木勇太郎 1,977 8頁 より引用。

※詳細は、「種類」参照。自生地の様子は同ページ「自生分布」参照。

学名のストレリチア(Strelitzia Banks)は、英国のジョージ三世の皇后、マクレンバーグ・ストレリッツ(Mecklenburg・Strelitz)家出身のチャーロット・ソフィア女王に由来する。これは 大航海時代の1,773年、バンクスによって初めて南アフリカから英国に紹介され、その花の美しさ、珍しさに国中がわき返り、ときの皇后の名に因んで命名されたのである。英名は「バード・オブ・パラダイス・フラワー」(Bird of Paradise Flower)で、和名はこの訳で極楽鳥花と呼ばれる。

ニューギニアに生息している極楽鳥に似ているからという説もあるが真相はよく分からない。他には鶴に似ているところから「クレイン・フラワー」(Crane Flower)と呼ばれる。中国では鶴望蘭と呼ばれる。(注、蘭とは貴重な植物を意味する。)日本へは明治5年に渡来し、田中芳男氏が上野博物館培養のものを小石川植物園へ寄贈したのが始まりとされている。

極楽鳥花の世界 鈴木勇太郎 1,982 4頁 より引用。

パービフォリア?ジャンセア?

未だ、一般的な植物ではない。

第二次大戦後世界中に広まって生け花やフラワーアレンジメント、暖地の庭園用植物として親しまれる様になってきた。日本では当初一部の人が限られた期間使える高級切り花であったが、最近では生産量が増えて、葬式の盛り花の中にも取り入れられる様になってきた。これは和名の極楽鳥花の名前が極楽浄土に結びつくと考えられる。また、同様にテレビ番組やホテル等の盛り花の中にこの花が取り入れられる事が多くなり、年間を通じて目にする機会が多い。切り花であれば、ほぼ年中手に入れることは難しくは無くなってきた。

その様なことから、名前は知らなくても花を見れば「この花か」と知っている人が多くなってきている。ただ、沖縄や他の暖地で地植えの株を目にする機会が多い事や花の印象から、熱帯又は亜熱帯の気候でないと育たないと思っている人が多い。

また、一般的に市場へは鉢花として出回らないため、花屋で株を購入する機会はほとんど無い。よってストレリチアの栽培を楽しんでいる人は、他の花に比べて少ない。

たまに目にするものを注意深く見てみると、花立ちの少ない在来系のものがほとんどである。比較的簡単に手に入れることが出来たもの(安い株)は、あまり良い株では無い事が多い。それはこの花が他の花に比べて研究が遅れている事を意味する。つまり、品種改良ではなくて、単に増殖、そしてそれらの選抜が行われていた程度であったため。

元々南アフリカに自生している個体はそれほど花立ちの良いものではない。よってそれらの交配や選抜で良い個体を作り出すことは難しい。しかも、種を播いてから、開花まで4年も掛かるから、結果を確かめる事は容易では無い。現在は一部の研究家によって優良系統の育種が行われた事によって、以前よりは良いものを手に入れられる機会が多くなった。これはどちらかといえば鉢物より切り花の方が先行している。それは、花屋で黄花ストレリチアの切り花を見掛ける事からも分かる様に、花農家が優良系統の苗を導入したためである。

画像は今から8~9年前海外通販で、「parvifolia juncea」という商品名の種子を育てたもの。結果は100%レギネーで、橙色花を少数付けている。最初からこの名前を見て「なんだこれは?」、「どうかな?」と思ったものの、良くてジャンセア、外れて中間種が手に入れば良いと思い、購入したものです。育て始めて2~3年で「あ!!・・・これは違う!」と確信し、その後花を見て「やはり」と思ったものです。種類が異なったのが意図的か偶然かは分からない。しかし、生まれてきた株の形質にばらつきがある事は理解出来ても、種類まで間違えないで欲しいところ。まあ、これが現実です。ストレリチア以外の変な植物が出てこなくて良かったと言える位です。この後しばらくして購入先のリストからこの商品名が消えたのは言うまでもない。

※花立ち、花、草姿等の詳細は「形態」→「レギネー分類」、優良系統の詳細は、「品種」参照。

優良系統苗

苗を多数購入し後で選抜する。又は選抜開花株を購入する。

ストレリチアはあまり出回っていないため、たまに見かけるとつい買ってしまいがちです。それで良い株が手に入ったと満足してしまいます。しかし、実際に育ててみると、いつまで経っても花が咲かない。株は良く育つのに花は見られない。いったい何が悪かったのだろうと考えたりしますが、実はそれは育て方ではなく、良くない株だったと気が付いていない事も多い。

それで、「ストレリチアは花を咲かせることが難しい」、又は「この地方ではストレリチアは咲かない。」と言った誤った情報が流れてしまう事が良くあります。

上記の通りストレリチアは研究が遅れていて、あまり良くないものが出回っている事も事実です。特にネット通販でただ単に「ストレリチア」として売られているものは疑ってみた方が良い。

ストレリチアは基本的に実生で殖やされている。よって例えそれが優良系統苗であっても、多少あまり良くないものが含まれる。一株だけ購入した場合、運悪くそれに当たってしまうこともあります。そこで、最も確実な方法を考えてみる・・・。

苗の場合、優良系統である程度の数、具体的には100株以上購入し、後に選抜すれば確実に良いものを幾つかは残す事が出来ます。初代のオレンジプリンスで優良株の割合は、1/50位。文句無く良い株だと断言できる特別優良株の割合なら1/500位。更に代の進んだ苗であれば、もっと少ない数から良い株を得られる可能性があります。

その場合、通常の苗より高値になるが、決して悪い買い物にはならない。(下記事参照。)逆に素性の分からない苗を買い求めることや、とにかく安く手に入れようとすることは、銭失いになり易い。

    購入先選定のポイント:
  • 優良株の定義が示されていること。
  • それが優良系統である合理的な根拠が示されていること。
  • 結果が示されていること。
  • やっている人がストレリチアの事を良く知っているかどうか。

等です。以下、解説

その苗に「優良系統」や「良苗」等付けることに法律や規制は無いので、それだけで判断することは出来ません。よって、そのストレリチアの何がどうだから優れていると言うことが示されていることが重要です。

それで実際に写真で確認出来ることも重要です。ストレリチアの交配結果は「カエルの子はカエル」の様なところもあるので、親株の性質を写真を見て判断する事になります。

また、その苗が将来どの様な花がどの程度の確率で咲くのかを確認出来る事で信頼性が増す。

そして、最も重要なことはやっている人がどの程度ストレリチアの事を理解しているかどうかです。例えば良く分かっていて交配しているのと、そうでないのとでは、結果の差が大きいからです。

それを確かめるには、その人が書いた文章を読んでみれば良く分かります。一例としては、内容以外で文章の最後が「・・・でしょう。」とか、「思われる。」が多用されていると言うことは良く分かっていない事を意味する。

次に開花株の場合、最も確実な方法は、選抜した開花株を購入する事です。ただ、この場合は、一般的なものより高価になるが、致し方ありません。しかし、2017年1月現在でも、どうでも良いような株が高値で売られていることが多い。

栽培者はストレリチアは全て同じではない事を肝に銘じなければならない。

開花株購入のヒント:日本では(亜熱帯地域を除く。)主に冬期間が開花期になるため、冬、開花サイズの株が売られている場合、それが花立ちの良い株であれば必ず花芽が複数付いている事になる。もし、1本だけとか付いていなければ・・・ご想像の通り。

その他、一株だけ育てて後で分けて数を増やそうとはせずに、最初から必要な数を購入して育てた方が良い。優良系統は特に株が増えにくいため、大株になるまでに時間が掛かるため。

※開花期の詳細は「育て方」→「鉢植えレギネー開花株の管理」→「優良系統レギネー種開花傾向」参照。優良系統は、「品種」参照。当サイトの販売は次で行っています。ストレリチアショップ(http://shop.strelitzia.jp/)

選抜株

高いものもあるが、良く考えると決して高いことは無い。

ストレリチアは園芸界ではどちらかと言えば特殊な存在であり、開花株や苗は一般的に花屋や園芸店で売られる事は少ない。たまに売られていても、値段を聞いてあまりの高値に驚き、購入をやめてしまう人は珍しくありません。しかし、それはストレリチアのことを知らない人、又はそれほど興味の無い人と言えます。

何故その様に高い値段になってしまうのかを挙げてみます。ストレリチアを増やす主な手段は、種子増殖ですが、良い苗を作るには、良い親株を用いなければならない。しかし、元々自生株はそこそこな株が多い。(花が多く咲くと言うことも無く、全く咲かないでも無い。)またストレリチアは個体差が大きく、在来系統であれば親株候補になるものは、数百株に一つと言った事も珍しく無い。

最初にその数百株の苗を開花株に育てるには、広いスペースとハウス、苗代、3年~4年の時間、肥料、水、電気、暖房用燃料等の費用、その他労力が掛かる。実際には自分自身の人件費は除いて、その他掛かる費用は、土地代+ハウス代+苗代+(固定資産税+肥料代+水代+電気代+ハウス暖房用燃料代)×4年分+ハウス修繕費等=高額。

また後に選抜した一株以外は全て処分するため、掛かった費用は無駄になってしまう。よって、それらの費用を次の苗代に転嫁することになる。ただしこの時点ではまだ親株候補が選ばれたに過ぎない。ようやくスタート地点に立ったと言うこと。

この親株候補と別の選抜親株候補を交配し、種子を収穫し、実生で苗を育てなければならない。これらの過程にも当然上記経費(費用)が生ずる。

代の進んだ苗とは、上記選抜親株候補から育てた苗の中から、花や花立ち、草姿等の良い株をもう一回選抜したものを親株にして育てた苗の事で、ばらつきの多い主にレギネー種の品質を高め、安定させる狙いがある。

以上の事を総合的に考えた場合、「ストレリチアは高い!!」ではなく、「高くて当然!!」と言える。しかし、その苗を見て、それまでの過程を理解出来る人はほとんどいない。それで、ストレリチアに興味はあっても購買拒否が起こる。

それでも幸いな事に、この様にして出来た苗は、優れた性質を持っている可能性が高い事も事実である。実際に、高いと思われているストレリチアは本当に高いのかと考えれば決してそうではない。なぜならば、適正条件下では寿命で枯れたと言った話は聞いたことが無いからである。つまり、最初に投資すれば、半永久的に楽しむことが出来る。苗でも開花株でも初期投資額を予想栽培年数で割ってみれば、他の鑑賞植物よりは余程安いと言う事が良く分かる。優良系統の高い苗でも、決して高いことは無い。

ただし、一つ気を付けたい事は、ネット通販では全然花の咲かない株や、淘汰すべき株、悪い株を高値で売っていること。初心者にはこれらを見抜くのは難しい。

※自家生産ではないところで売っている場合は、仕入れ値に利益を載せているので、どうでもよい物が高値になります。写真は優良系統選抜株。

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