レモンの挿し木
1,挿枝の選定、挿し穂の調整、挿し木、その後の管理
このページではレモンの挿し木を取り上げています。
レモンの挿し木は他の植物と同様で特別な事はありませんので、他のサイトで見てもらえば良いと思っておりましたが、適当な枝が発生したため、掲載する事にしました。
解説:挿し木に適した枝は充実した枝です。(1)写真は徒長枝ですが春枝はすでに伸びが止まり、葉は展開し固まったところです。今回はこの枝を挿します。(2)同じ様な枝を切り取ったところ。
切り取った枝を挿し穂に調整します。最初に1本の長さが10~15cmで切り揃えます。(3)次に茎の下側半分位の葉は元から落とし、残した葉は蒸散を抑えるために半分位切る。(4)
全ての挿し穂を同じ様に整えたら一旦水揚げを行う。(5)バケツに5cm位水を張り挿し穂を浸ける。この状態で30分以上1日以内位、しっかりと吸わせる。
(6)枝先端部の一見瑞々しい感じの枝は良さそうに見えても通常挿し木には用いない。また伸長中の柔らかい枝も用いません。その様な枝は挿してから腐りやすいためです。
(7)十分水揚げした挿し穂は最後の調整を行います。茎の下側先端部を楔形に切ります。断面積を増やし吸水量を増やす、発根範囲の拡大等の狙いからです。(8)次にその切り口に発根促進剤を薄く付ける。この時使用したものは「オキシベロン」切り口に薬剤をまぶし、指ではじけば余分な薬剤が落ちる。
(9)挿す鉢は、今回は5号駄温鉢を用いた。用土は鹿沼土単用。粒の細かいものの方が活着率が高い。一般的には挿し木とは言っても、鉢に用土を入れてからぶすっと差し込むのではなく、細い棒で下穴を開けてからそっと差し込むものです。
しかし、粒状の用土は下穴を開けても、周囲から崩れ易いので、今回はまず鉢の半分程度用土を入れ、次に挿し穂を鉢の縁に立てかける様に周囲へ並べて、最後に用土を縁まで入れた。この様にしても挿し穂の切り口を痛めない。尚、今回は鉢の中央には挿していない。鉢穴には防虫網は入れていない。また特にウォータースペースは考えていない。
挿し木間隔は隣の穂の葉先同士が触れ合うかどうかが基本だが、実際にはそれより狭い間隔で挿している。それでも問題は発生していない。
(10)最後に鉢土全体が湿る様に水を与える。
ここまでは特に特別難しいことはありません。問題はその後の管理です。置き場所は風当たり、日当たりの少ない場所です。気温は夏場は自然条件で良い。
(11)写真はビニールハウスの角でちょうど条件に合っている。一般的には鉢の周囲をビニールで覆い風避けとする。ビニール上部は解放し蒸れない様にする。
(12)は黒の寒冷紗を張って強い日差しを遮っている。
2008年7月1日
解説:茎だけになった枝や萎れた葉は、寒冷紗の隙間から直射日光が当たっていてその様になった。その他特に悪いことは見られない。最初の1ヶ月でだめな枝は腐ってしまったり枯れてしまう。
挿し穂の状態が安定しているため、特別な事がなければこれで成功する可能性が高い。しばらくは水やり管理のみ。
2008年8月1日
解説:(1)だいぶ葉が落ちたため数が減ったように見えるが、今までの期間腐ったものは無い。葉が落ちたとしても失敗ではない。(2)は葉が全て落ちた挿し穂の発根の様子。
これで挿してから2ヶ月になるがこの発根は順調と言える。秋までには3本以上根が出て、鉢上げを迎える。
中には新しい枝を伸ばしているものもある。総合的に見て今回の挿し木は成功したと考えて間違いない。
2008年9月1日・・・鉢上げ
解説:挿し木後3ヶ月経過し、根が多く伸びてきた事から鉢上げを行います。(2)は6月末に挿したものだが花を付けている穂もある。充実した枝の証拠。(3)根は多いもので3本、少ないものでも1本は出ている。本数は少なくても長く伸びているものが多い。
(4)用土は基本培度に鹿沼土、それに腐葉土と完熟堆肥を各1~2割混合とした。鉢は10.5cmポリポット。(5)(6)植え方はまだ根が少ないことから、やや深植えにする。用土で茎を支え真っ直ぐに植えるため。(7)最後に鉢土全体が湿る様に水を与えて完了。
(8)(9)中には全く根の出ていないものもあるが、再び挿しておけば活着する可能性がある。
5月末に挿したものは葉が日に当たって萎れたものがあったが、6月末に挿したものは活着率100%と良い結果を残した。充実した枝を用い、適切に管理を行えば珍しい事ではない。
鉢上げ後の管理はしばらく日当たりと風当たりの少ない場所へ置き、土の表面が乾いたら水を与える。活着後は日当たりの良い場所で管理する。
2008年10月1日・・・初期管理
解説:鉢上げから1ヶ月後の様子。活着して落ち着いたため、液肥を1回与えている。それで葉の色が濃くなった。樹勢の強いものは枝を伸ばしている。他にはつぼみを付けているものもある。
季節が進み日差しが弱まった事で日当たりに出しても問題無い。
2008年11月1日・・・生育初期
解説:(1)この秋は比較的高温で推移したため鉢上げ後生育を続けています。
(2)は新芽を伸ばしている。
(3)はつぼみを付けている。このつぼみは咲かせても結実はしないので、早めに摘み取る。
※以降の管理は、「挿し木苗の育て方はこちら」へ
2009年8月1日・・・葉を落とした挿し穂のその後
2009年9月1日・・・葉を落とした挿し穂のその後
2011年9月1日・・・レモンの挿し木、四方山話・・・1,太い挿し穂
今年は例年より真面目に管理を行いました。その結果が想像以上になりましたので、ここにご紹介致します。
例年より真面目とは、まず挿し穂を太さ別に分けて挿したこと、他には用土を鹿沼土の小粒単用としたこと、遮光を遮光率45%位の寒冷紗1枚だけにしたこと等。その他はこのページの上部に記載の通りです。
解説:(1)は2011年6月、春枝の伸びが止まって枝葉が硬化してから枝を切って、太い枝のみを挿したものです。
枝の太さは最大で直径8mm位です。すでに活着し、葉が展開しています。(2)は鉢から抜いたところです。
(3)挿し木後2ヶ月であるにもかかわらず根鉢が形成されています。(4)根は挿し穂から2箇所以上太い根が出ていて、その根からは更に細い根が良く伸びている。
挿し穂の調整は長さ:13cm前後で、葉は3枚残しでそれぞれ半分にカットしています。途中で腐ったものは無く、活着率は100%です。