ストレリチアの品種は、レギネー種の橙色花、黄色花それぞれ一種の計二種、その他に中間種の橙色花、黄色花等があります。この花は他の花に比べて研究が遅れていて、品種が少ないのが現状です。無茎種の場合、橙色と黄色しかないので、今のところ花首や仏炎苞の色を赤くする交配が主になる。今後新しい花色の作出が望まれるところです。
1981年、ストレリチア及び南アフリカ産植物研究家の鈴木勇太郎氏、作出命名。交配親は鈴木氏が最初に購入した実生苗の中で花立ちが抜群に優れた鈴木系選抜種(在来系統橙色花)とゴールドクレスト。
草丈は中性。草姿は直立性。生育良く、地植えであれば実生3年目で開花する個体もある。ある程度大きく、花立ちは良好の個体が多いので、切り花目的の営利栽培にも向く。
花色は橙色。仏炎苞はゴールドクレストの血を引いて赤紫色の個体が出る。仏炎苞が緑色になってしまっても、花首の部分が鮮紅色に染まる個体は美しい。花首から仏炎苞全体が赤色、紫色、赤紫色の個体も出るが数は多くは無い。ストレリチアは花色が少ないため、花の印象は仏炎苞で決まる。この品種の登場によって日本のストレリチア界に衝撃を与えた。
※2019年末現在、同種苗の生産販売は終了しています。よって、今後、苗が出回る事はありません。他で同名称の苗があったとしても、それは正規品ではありません。花首、仏炎苞の発色は個体差がある。オレンジプリンスの優良花、優良株は、「オレンジプリンス優良花の紹介」参照。在来系統橙色花の詳細は「種類」→「レギネー種、在来系統の紹介」参照。
1980年、上記品種と同じく鈴木氏作出命名。
交配親は原種の黄花で、仏炎苞が赤紫色系の個体と、花首が鮮紅色の個体との交配種。両株は共に花立ちの良い選抜株。
草丈は中性。草姿は直立性。橙色種と比べると葉がやや小さい傾向がある。これは交配意図の一つ。上記品種と同様に生育良く、地植えでは実生3年目に開花する個体もある。
花立ちは良好な個体が多い。上記品種と同様に切り花目的の営利栽培にも向く。日本で見かける黄花の切り花はほとんどこの系統。
上記品種と同様に仏炎苞は赤紫色のもの、又は仏炎苞は緑色でも花首の赤い(紅)個体も出る。しかし花首から仏炎苞全体が赤色、紫色、赤紫色の上物個体は数が少ない。
ストレリチアの花色はそれまで橙色一色だった。そこへ投入された黄花はひときわ異彩を放った。鈴木氏の功績は大きい。
※他で同名称の株があったとしても、系統が同一かは分かりません。ゴールドクレストとは金のとさか、紋章の意。花首、仏炎苞 の発色は個体差がある。黄花原種の詳細は「種類」→「レギネー種、在来系統の紹介」参照。ゴールドクレストの優良花、優良株は、「ゴールドクレスト優良花の紹介」参照。
写真は2010年代、上記品種と同じく鈴木氏が作出したもの。
素性は、原種の黄花ジャンセアと在来系統橙色レギネー種との自然交配(予想)個体に、ゴールドクレスト優良株を掛けて、その中から葉身の非常に小さな個体を選抜した。
その葉身の小さな個体同士の交配から、更に葉身の小さな個体を選抜したものを黄色花ジャンセアとして販売しているのが現状。写真はその中で、葉身の無い個体。非常に珍しい。
草丈は小型から中性位が多い。今後大きくなる可能性有り。
花立ちは一般的なジャンセアと同様。つまり、多くはない。
花色は、今の優良系統と比べると見劣りする。葉身の無い方向へ持っていったため、元親の原種黄色花ジャンセアに近付いた感じ。同系統で少しでも葉身を持った個体に良い花を付ける個体が見られる。
(3)は参考写真で、先述の葉身の小さい個体の花を載せたもの。
黄色花ジャンセアの生産はまだ始まったばかり。一般に普及するには途方も無い時間が必要。また、原種黄色花ジャンセアの血の入った株を用いて、葉身の全く無い優良花を目指すのは難しいかもしれません。
※他で同名称の株があったとしても、素性が同一かは分かりません。原種ではなく、交配によって生まれた株のため、「種類」ではなく、「品種」に載せてあります。
極細葉系とは別の、オレンジプリンス特別優良株と、同じく花色と、花立ちの良いジャンセア選抜株(中型原種)との交配種。
草姿は直立ですっきりとしている。葉の形はレギネーの葉を小さくした様なものが多い。希に円形に近い個体と極細葉系と同じ様な縦に細長くジャンセアと見間違う様な個体も出る。大きさ、草丈等に個体差がある。
花は花首が赤色~紅色、仏炎苞は赤紫色の個体も出る。写真は良い花の例。その色合いは極細葉系中間種に勝るとも劣らない。
生育のスピードはジャンセアより速く、レギネーより遅い。播種から開花まではレギネーよりやや時間が掛かる。
花立ちはジャンセアと同じで、年1条当たり2本が最多。直立性なので場所を取らず、観葉植物としても面白い。
※極細葉系中間種と細葉系中間種はどちらもレギネーとジャンセアとの交配種ではあるものの、系統が異なり成株の草姿が異なる事から分けて記載した。花首、仏炎苞 の発色は個体差がある。写真の株は園長作。草姿の詳細は→「中間種草姿のバラエティ」参照。
草丈は中型の範囲。それほど大きくならない個体もあるが、生まれ持った性質で伸びるタイプは、地植えで株が混み合ってくると2m位になる事もある。
草姿はジャンセア寄りで、レギネーの面影は感じられず、非常に葉幅が狭くて短い、又は細くて長い等。離れて見るとジャンセアと見間違うほどである。大きく育った株は葉を近くで見なければそれが中間種とは分からない。中間種でありながら、ジャンセアの一変種と言われても分からない。
花色は、花首から仏炎苞上部にかけての赤色がすばらしい。仏炎苞中部から下部の色はオレンジプリンスから来ていると思わせる。無茎種の中で最も優良花率が高い。
花立ちは、最多で年間1条当たり3本。この種もジャンセアと同様で、葉が年間2.5枚(本)程度しか出ないため、花立ちの良い株でも最多で2本が一般的。
この品種はレギネー種とジャンセア種との交配種であるにもかかわらず、全ての面でジャンセア寄りのところが興味深い。(割合としてジャンセアの形質が3/4でレギネーの形質が1/4かそれ以下と言った印象。)
※花首、仏炎苞の発色は個体差がある。鈴木勇太郎作
(1)(2)は園長が原種黄花ジャンセアを使わずに色々な株を交配して作出したもの。2000年代最初の頃から交配を開始し、2010年12月中旬頃に初花を確認した。これは日本で一番では無いと思われますが、 早い方です。しかし、黄花ジャンセアを使わない同種の作出は日本で一番最初と思われ、普通はやらない。
写真はこの系統の中で黄花を付けた株の中から2~3番目に開花したものを掲載した。新系統であるにもかかわらず、優良花に必要な条件は全て揃っている。この様な花は同系統内他株にも見られる事から、良い発色を一つの花にまとめることが出来た好例と言える。
草姿に関しては上記細葉系、及び極細葉系とは異なり、葉柄がレギネー種並に太く葉は肉厚で力強さを感じさせる。この株はこの系統の中では葉が大きい方で、中には極細葉系と同じくらい小さな葉を付ける個体もあるが稀。多くは細葉系をやや大きくした位。
一般的に中間種は葉と大体同じ高さに花を咲かせる個体が多いものの、この株はレギネー種の様に葉の上に長く伸びて咲いている。これは中間種としては非常に珍しい。
またこの花を単に‘黄色花ストレリチア’として見た時、レギネー種の黄色花に勝るとも劣らない。
(3)~(4)は2010年代に選抜した一株。この株も、原種黄色花ジャンセアを使っていない系統。
主な特徴は、草姿関係では、草丈は中型。葉形は細長葉、それもかなりの長葉。例えるなら、レギネー種の葉を主脈に平行に細葉に切った感じ。今まで、中間種の中でこれほどの長葉は見た事が無い。
花立ちは年間一条当り二本。
花サイズは中型より大きい方。(一番花)花色は良く、優良花。
分けつは、中間種の平均位。
(5)は2010年代に鈴木勇太郎氏が生産した苗を、園長が育てて選抜した一つ。
素性は、原種黄色花ジャンセアにレギネー種を二回掛けて作った系統。
主な特徴は、草姿関係では、草丈は中型。葉形は極細葉。
花立ちは年間一条当り三本。
花サイズは中型より大きい方。(一番花)花色は良く、優良花。
分けつは、中間種の平均位。(以上はこの株の特徴です。)
以上、今まで無かった品種を最初から優良株として作出出来た事は評価に値しますが、実際には黄花ジャンセアを使わなくても黄花中間種が出来る事を証明した事に意義がある。つまり、苦労して親株を色々揃えなくても、交配技術でどうにかなる事が重要です。
※現状、種苗から育てた場合、草姿、花首、仏炎苞の発色は個体差があり、その幅が大きい。