草姿
レギネー種は大体すらっとした姿で美しく見えるが、生まれ持った性質で以下の様に別けられる。
(1)文字通り株元から葉先までまっすぐに伸びているもの。すっきりとしている。場所を取らず、各葉は日光を受け易い。優良系統の必須条件の一つ。
(2)葉柄がやや外側に倒れるもの。比較的良く見かける。在来系統や優良系統の一部で見られる。日本で出回っている黄色花レギネー種は、その親株の影響でこの傾向がある。葉柄は真っ直ぐでも葉身がやや外側に曲がる株も多い。
(3)日当たりの良い場所で育てても、また、健康な状態でも葉柄が湾曲して葉身は上を向く。下葉は株元からだらりと曲がり、葉先は地面に付く。直立系より場所を取り、見た目も悪いため、栽培には不向き。在来系統で見られる。この様な株は処分する。
※直立型でも古い葉や株分け後は垂れる事が多いが、ここでは新しい方の葉の状態を指す。
草丈
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(1)大
レギネー種は変異が大きいと言われる要因の一つが草丈です。かなり幅がある。栽培条件でも多少変わる。一般論としては草丈が大きいと花も大きく、小さいと花も小さい。草丈で花付きは変わらない。
大型とは草丈が200cm~300cmのもの。自生地の原種、在来系統で見られる。優良系統では稀。
中型とは草丈が150cm前後のもの。オレンジプリンス、ゴールドクレスト等の標準的なサイズ。在来系統でもある程度ある。
小型とは草丈が100cm前後のもの。オレンジプリンス、ゴールドクレスト等で少数見られる。在来系統でもある程度ある。
極小型とは草丈が50cm以下のもの。オレンジプリンス、ゴールドクレスト等で極少数見られる。
それを踏まえ、(2)は写真奥が中型の中の大(190~200cm)同手前は小型で、90~100cm。大きい方は在来系統。小さい方はオレンジプリンス。
(3)は中の中と、極小型(矢印)。中の方はゴールドクレストで、130~150cm。極小もゴールドクレスト交配株。
(4)は(3)の極小型。実生11年で成株と判断しているもの。あまりに小さいため、今まで開花した事はありません。草丈は、35~37cm。
以上の事から、花を咲かせるには、ある程度の大きさは必要だと言えそう。
※在来系統でも小型はあります。
葉のサイズ
葉形
レギネーは変異が大きいと言われる要因の一つ。何れも開花株の葉。
(1)披針形と楕円形の中間的葉形。あまり大きな葉ではない。写真はゴールドクレスト。披針形の個体で窒素を効かせるとこの様な形になることもある。優良系統交配種で良く見かける。
(2)トランプのスペードを細長くしたような形の葉。写真はゴールドクレスト。黄色花原種にも見られる葉形。
(3)写真はゴールドクレスト。非常に小さい葉。葉脈から推測してもよく分かる。中間種と見間違う程。日本に出回っている黄花は小型の葉が多いがこの個体は極端に小さい。葉が小さくて花立ちが良ければその個体は優秀と言える。オレンジプリンスでも小さな葉を付ける個体がある。
(4)葉先から丸みを持った形の葉。橙色花で良く見かける。写真はオレンジプリンス。下の大型葉の個体に窒素を効かせるとこの様になることもある。
(5)非常に大きい葉。葉脈から推測できる。橙色花で見られる。写真はオレンジプリンス。良く日光を受ける事が出来ると考えがちだが、あまり大きな葉は自分自身も日陰にしてしまう。
葉色(裏側)
これは二つに別けられる。どちらでも性質に差はない。何れも開花株の葉。
(1)葉表面は濃い緑色で、裏面は白い粉を吹き灰緑色に見えるもの。レギネーのほとんどはこの傾向。黄色花、橙色花共に。写真はオレンジプリンスで白い粉が多い個体。ここまで来ると白色又はシルバーリーフと呼んでも良いほど。一般的にはもう少し白い粉が少ない。
(2)葉の表裏、共に似たような緑色。個体数は多くはないが、特に珍しくもない。橙色花、黄色花共にたまに見かける。写真はゴールドクレストのもの。写真左下は表面の様子。表面に違いは見られない。
中央葉の右はこの株の花茎先端。やはり花茎も緑一色でつるつるした感じ。仏炎苞も同様。これを見ると、白い粉が直射日光から葉を守っているとは言い切れない。
※灰緑色の個体でも肥料、土壌改良材の影響で白い粉が少なくなる事はある。
斑入り
斑入りのバラエティー
(1)この株は橙色花レギネー5~6年苗です。一時期斑入りの範囲が少なくなってきて心配していましたが、だいぶ落ち着いた。細かい白色の斑が、広い範囲に入る様になった。
レギネー種の中にはもっと大理石状に派手に入るものもある。この株はおとなしい方。ストレリチアの斑入りは濃い緑色の葉色との対比が美しい。
(2)この株は黄色花中間種を目指した苗群の中から出たもの。
やや白っぽく見えるものの、黄色系の斑入りです。手持ちの斑入り株の多くは生育と共に斑が少なくなってしまうものが多かったが、この株に関しては、その様なことは無くはっきりとした斑が入るようになった。この苗は橙色花を咲かせました。
(3)この株はオレンジプリンス交配種子から生まれたもの。黄色系の斑が部分的に不規則に入っている。葉だけでなく葉柄にも縦に黄色斑が入っている。この株は斑の入る葉と、入らない葉と分かれる。この程度の斑入りでも生育が遅い感じがしている。
(4)この株はある系統の中間種2~3年苗です。葉の一部に黄白斑が大きく入っている。以前は見られなかったが最近中間種でも斑入りを見かけることが増えてきた。
しかし、問題点もあって、斑入りによって花立ちが悪くなったら意味がない。また、葉の小さな種類の斑入りではレギネー種より鑑賞価値が低い。
(5)(参考掲載)この株は選抜オレンジプリンス4年苗です。当初は何らかの害虫による食害跡と見ていたが、細かい点状斑だけでなく、大きな斑点も見られること、殺虫剤散布後も変わらないことから一種の斑入りではないかと考えている。
この斑入りによる影響で、生育は遅くあまり大きく育っていない。
(6)(参考掲載)この株はゴールドクレスト開花株の葉の表面です。ハダニ被害や生理傷害ではありません。出芽の時はもっと白っぽいがしばらく経つといくらか緑色っぽくなる。この葉色はいくら肥料を与えても変わらない。ちなみに葉脈は色付かない。
(7)(参考掲載)この株は細葉系中間種です。これを斑入りと呼べるかとしばらく考えていたが、葉の一部の葉緑素が少なく、白っぽく見えることから掲載することにした。
この斑入りの特徴は、まだら模様ではなく、葉身のどちらか一方に葉脈と平行に線を引いた様に入ること。また葉裏の斑入り部は白い粉を吹かない。葉柄にも細く線状に入ること。全ての葉には入らない。斑入り範囲は不定等。
どうも手持ちのオレンジプリンスの中にこの表現を持った株が存在するようだ。この斑について詳細は今のところ分からない。
葉脈
新しい葉の主脈の色について。何れも開花株の葉。
(1)新しい葉は主脈に紅色を発色するものがあるが、時間の経過とともに退色する。非常に濃い紅色(赤色)の個体から、最初から発色しない個体もある。葉脈全体的に発色する個体もあれば、半分程度の個体もある。
写真は葉脈が葉柄側から1/4~1/3位発色しているもの。この株はゴールドクレスト。
(2)この株は葉脈全体に鮮やかな紅色を発色している。しかも葉の縁まで同じ色を呈している。この株はオレンジプリンス。
(3)この株は原種に近い橙色花レギネー開花株です。主脈の紅色発色が強く、赤色に近い。また、その発色が支脈まで及んでいる。この様な株は珍しい。
尚、この発色と仏炎苞の発色とは比例していない。よって、葉脈発色で選別は出来ない。
(4)発色自体はほぼ葉脈全体に見られるが、色が薄いため目立たない。この株はオレンジプリンス。
花立ち
これが一番重要な項目。在来系統や単に増殖されたものは花立ちの少ない株の割合が高い。また、優良系統で株が若いうちは花付きが非常に良くても、大株になった時、自分自身で自分自身を日陰にしてしまうので、花立ちが若干悪くなる事もある。
それでは、どの程度花が付けば、花立ちが良いと言えるのかは、今の基準ではレギネー若株で年間1条当たり3本以上。これ未満のものは処分した方が良い。これは生まれ持った性質なので、育て方を変えても結果は変わらない。
(1)は年間1条当り4本出るもの。花が良く咲くため、株があまり増えない。優良系統で見られるが多くは無い。写真はオレンジプリンス。ゴールドクレストでも同様の株は存在する。
(2)は年間1条当り5本出たもの。本州の温帯域では、葉は年間5枚出るかどうか。よって、新芽近くの葉以外の全ての葉に花芽が出た事例。今まで数十年やってきて一回(一シーズン)だけ見られたもの。
若株で、元々年間1条当り4本出る株が、空梅雨で日照時間が長くなった時にこの様な結果になった。よって、色々な条件が重ならないと見られない。オレンジプリンスでも、ゴールドクレストでも見られる。ちなみに写真は、ゴールドクレスト。
(3)は1葉2花の様子。1本目は長く伸びて上で開花中。もう1本は株元に近い位置で開花中。この株はオレンジプリンス。全ての葉で2本花立ちにはなっていない。
(4)は1葉3花。株元で咲いている2本と、その左側の長い花茎の合計3本出ている。ただ、全ての葉で3本出ている訳ではありません。1葉当りの多花株は、主の1本以外は貧弱な花になりやすい。しかし。この株の様に比較的良花でこの花立ちの株は珍しい。この株はオレンジプリンス。
この株にとって1葉2本以上花立ちは珍しい事では無い。多肥で育てると多くの葉で2本以上花芽が出る。この様な株は、草勢が花立ちの方へ向かうため、株自体はあまり増えない。
(5)は1葉5花。一箇所から多くの花芽が出たため、えのき茸やかいわれ大根を彷彿とさせる。過去数十年やってきて、一箇所5本は一回だけ。やはり、全ての葉で5本出ているわけではありません。また、毎年この花立ちにはなりません。ちなみにこの株はゴールドクレスト。
今までやってきて、1葉当り複数花立ちは、オレンジプリンスより、ゴールドクレストの方が発生確率が高い。
(6)は年間、一条当り1本出るもの。全く咲かない訳では無い。もし花色が良いとためらいがちになるが、処分した方が良い。在来系統で見られる。
この株と(7)悪い株、(8)無し、及び草姿の湾曲型の株は、単に「strelitzia]で売っていた種子から育てたもので、恐らく在来系統。
(7)花立ちが悪い株がどのようになるのかを現している。草勢が花を咲かせる方向ではなく、株を増やす方向へ向かうため、あっという間に大株になってしまう。今はちょうど分けつ後いくつもの葉を伸ばし始めたところ。この様な株は良花を咲かせても、処分するしかない。
(8)全く咲かないもの。株が増えるだけで花は咲かない。観葉植物として割り切れば良いかもしれないが魅力は少ない。処分した方が良い。在来系統で見られる。この株は今はまだ小さいが、今後悪い株の様になる。
花色・・・萼
主に2つ。ストレリチアにとって最も変化を求めたい部分。今後の品種改良に期待。
(1)ストレリチアにとって最も一般的な色。自然の中で咲いていても目立つ色。この色がサンバードを呼び寄せる目印と考えられている。大体どれも同じ様な橙色だが、原種の中には、少し色の濃い赤橙色の個体も見られる。
(2)橙色花から突然変異で誕生したと考えられている。はっきりとした黄色。以前は非常に珍しかったが、今では多く出回るようになった。黄色花ストレリチアは色々な名前で出回っていても、元は数株の原種から増やされたもの。尚、黄色の発色にほとんど個体差は見られない。
(3)黄色花を多く育てていると希に黄色の発色が少ない花を見かけることがある。艶消し黄色と言った方が合っているかもしれない。一般的に黄色花に日が当たると反射して輝く様な黄色に見えるものであるが、この花にはそれが無い。特に萼の縁は黄色の色素が少なく見える。
この発色は不安定で固定出来ていない。よって新品種と言える次元のものではない。
※花器官の名称は「形態」ページ「花の形態」参照
花色・・・花弁
花弁色の変化。
(1)青紫色(紺色)の花弁。通常、レギネー種、ジャンセア種、中間種等の無茎種はこの色。参考:有茎種は薄い青色や白色等。
(2)白い発色と言うより、青色系色素欠乏の方が合っている。ゴールドクレストで、度々見られる。同じ株でも全ての花がこうなる訳では無い。また、毎年同じ株で見られる事も無い。この表現は不安定。
(3)この花は黄色花中間種から出た、橙色花種。後から咲いた花弁が白色になったもの。(矢印)この株の全て花が白くはならない。また、毎年同じ株で白花が咲く事も無い。
(4)写真はゴールドクレスト。一輪開花状態。花弁が全体的に薄い水色。ニコライの花弁も水色だが、この花はそれより青色系色素が少ない感じ。
(5)写真はオレンジプリンス。(4)とほぼ同じ色合い。たくさん栽培していると、この様な花が見られる。この色も固定されていない。
(6)写真は極細葉系中間種。一輪開花状態。花弁が全体的に薄い藤色。上記薄い水色発色に似るが、こちらはそれより青色色素が少ない感じ。
以上、当ハウスでは白色系花弁は固定されておらず、毎年違う株で発生する。よって、品種として認められる状況ではありません。
花色・・・仏炎苞
ストレリチアは花色が限られる事から花の印象は仏炎苞 で決まる。比較的良い色の花を紹介する。
(1)写真はゴールドクレスト。良色花では一般的な発色。赤色に少し紫色を混ぜたような色合い。仏炎苞 表面に白い粉を吹いているため、ややぼやけたように見える。この色合いは黄花原種Aから来ている。
(2)写真はオレンジプリンスやや紫色が入るが、赤色主体の発色。(1)より白い粉が少ないと言えば少ない。それでも比較的明るい色調で、ヘリコニアと近い植物であると言うことを思わせる。
(3)写真はゴールドクレスト(2)とは逆に濃い赤色が印象的。落ち着いた雰囲気を醸し出す。この色は両親とは似ていないので興味深い。
(4)写真はゴールドクレストの特別優良花(参考掲載)(3)に似るが、この花は仏炎苞 は濃い赤色で、花首がはっきりとした赤色を呈している。(1)は花首が紅色系で赤が薄い。(3)は花首が赤色系だが、発色がやや甘い。
この様に一つの花で仏炎苞 も花首もはっきりとした赤色の発色する個体は極少ない。非常に良い花の例として掲載した。
(5)写真はオレンジプリンス(1)に似るが、白い粉が少ないこともあり紫色がはっきりしている。
(6)写真はオレンジプリンス(5)から仏炎苞 表面の白い粉を取り除いた様なはっきりとした色合い。非常に印象的。特筆すべき点は、花茎を包んでいる鞘(表皮)まで同系色を呈していること。良色花であっても多くは緑色。この様な発色はジャンセア特別優良株を彷彿とさせる。→種類ページ参照。
手持ちの株の中ではこの辺りが一番良花か・・・
※画像は色調補正等行っていません。
花色・・・花首
仏炎苞の形、大きさ
仏炎苞の個体差
(1)は太く立派なもの。長さは大した事はありませんが、幅は手持ちレギネー種の中で一番大きい。仏炎苞の一番太いところの幅(上下幅)は5cmある。この株は在来系統。ちなみに草体も立派。
(2)は太く長く立派なもの。写真では普通に見えるが、実際にはかなり大きい。長さは24cm以上、仏炎苞の一番太いところの幅(上下幅)は4cmある。手持ちのオレンジプリンス中では最も幅が大きい。ちなみに花茎も太い。
(3)は標準的なもの。太すぎず、細すぎず全体のバランスが取れている。ストレリチアと言えばこの形。写真はオレンジプリンス。橙色花では良く見られる。
(4)は上の標準的を引っ張って伸ばした感じ。長さは約26cmある。写真はオレンジプリンス。この様な形も見栄えがする。
(5)は一様に細長い。仏炎苞の長さは、27cm。2020年1月現在、当ハウスの無茎種で最も長い仏炎苞。この植物は鳥の印象が強いため、細長い仏炎苞 が一番イメージと一致するかもしれない。写真はゴールドクレスト。
(6)は長さが12cm位。草丈が小型の個体で見られる。草丈と花の大きさは、大体比例している。写真はオレンジプリンス系。
花茎太さ、長さ
花茎の個体差。
(1)写真はオレンジプリンス。花茎の長さとは、ここでは草丈に対する花茎の長さのこと。写真では葉とほぼ同じ高さで開花している。この様な株は多くは無い。
オレンジプリンスやゴールドクレストの場合、親株の一つが花茎が短いので、その形質を受け継いだと考えられる。「種類」ページ「レギネー種在来系統の紹介」参照。
(2)写真はオレンジプリンス。草丈に対し非常に長く花茎を伸ばしている。草姿がコンパクトであるから余計に長く伸びている様に見える。ストレリチアの多くはこの様に葉の上30~40cm上で開花する。
※草丈が大きい株の場合、葉と同じ高さで開花していても花茎が長いと言うことはある。
輪数
多段咲き
一花茎当りの仏炎苞 の数
(1)栄養状態の良い株の場合、仏炎苞が二段に咲く事がある。レギネー種以外にジャンセア種、中間種でも見られる。有茎種は多段咲きが標準的。写真はオレンジプリンス。
二段咲きはその年一番最初の花(一番花)で見られることが多い。黄花、橙色花、種類を問わず、特に珍しいものでは無い。
(2)写真はゴールドクレストの三段咲き。無茎種では非常に珍しく滅多に見られない。実際には仏炎苞 は4つ出ているが花の咲いているものが3つだったため、三段咲きとした。二段目以降は仏炎苞が小さいと花弁が出ない事もある。この花も一番花。この株は生育期に多めの肥料で生育を促したもの。二段咲きと同じ様に栄養状態で決まりそう。
(3)ちょっと分かりにくいかもしれません。中央斜めに伸びているのが一段目の仏炎苞 、その途中から二段目が出て開花中。つまり、一段目は真っ直ぐで鳥のくちばし状にはなっていません。一応一段目からも花弁、萼は出ている。
どうしてこの様になったのか理由は分かりません。この様な開花は滅多に見られないが、咲くより咲かない方が良い。
(4)咲いていないので、二段咲きではありませんが、気持ちは分かる。二段目を咲かせられるほど体力は無いものの、とりあえず出してみた、と言った感じ。豚の尻尾ではありません。