鉢植え栽培
2014年4月21日~
このページでは夜香木の種子から開花までの様子を取り上げる予定です。夜香木と言えば夏場の夜間非常に強い香りを漂わせる花として有名ですが、なかなか園芸テキストには載らない存在です。その様なこともあってあまり普及していないのが現状です。その夜香木を種子から育てることで生態や管理のポイント等をご紹介します。
解説:(1)は挿し木苗を1年育てたものです。樹高は2m近くあります。(2)昨年開花後結実して、当初緑色だったのが、越冬して暖かくなってきたら白色に熟しました。
(3)果実の中には黒い種子があります。写真左は黒ごま、上は玄米、右が夜香木のものです。大きさは玄米並で、形は黒ごまに近いと言ったところです。
(4)収穫した種子は水洗いしてすぐに播きました。用土は無肥培土に完熟堆肥を2~3割混合したもの。鉢は10.5cmポリポットです。
(5)(6)種子が隠れるくらいの覆土して水を与えて、電熱線で加温しているトンネルに収容した。この後は土の表面が乾いてきたら水を与える。
2014年5月3日~6月1日 発芽始まる。その他。
解説:(1)播種後2週間位経過して、地表の一部が盛り上がってきました。(矢印)いよいよ発芽が始まりました。
(2)芽の動きは速く、土の盛り上がりから3日で双葉が展開を始めた。(3)その後幾つか同じ様に発芽してきた。中には双葉では無く、子葉が3枚のものもある。
(4)今でも発芽中のものもあるので、ある程度の数、苗を確保出来そうである。
現在の管理は電熱線で最低地温を25℃位に保っています。その他、土の表面が乾いてきたら水を与えています。肥料は与えていません。
(5)屋外で育てられる様になってまず遭遇する害虫はアブラムシです。芽先や葉の裏にはびっしりと付いています。ちょっと油断するとすぐに2~3匹確認出来て、その後放置するとご覧の状態です。
原因は他の植物から移ってくるか、越冬時ひっそりと付いていたかのどちらかです。幸いなことに一般的な殺虫剤で駆除することが出来ます。ただし、スプレー式のすぐに使えるタイプの殺虫剤は、生き残りが出るので、粒剤か水で薄めるタイプの殺虫剤を散布したい。
2014年7月1日
2014年8月3日
2014年9月1日一番花
2014年10月14日二番花
解説:今年は秋の訪れが早かったため、秋開花は難しいかと思われた。しかし、植物の成長を止めるほど気温が下がらなかったため、何とか開花にこぎつけました。
(1)は生育旺盛株で、株の至るところから勢いの良い枝が伸び、その各節からは小枝が伸び、その先に花を付けています。
(2)(3)そして、暗くなるとむせ返るほどの香りを漂わせています。
(4)実生苗の方も順調で、最も良く育った株は花を付けました。(5)種子から花が咲くまで育てるなんて気が遠くなる話・・・ではなく、ある程度育てば花を付けることが分かります。
このことから、夜香木は高いお金を払って大きな木を買う必要は無く、挿し木の子苗を買えば初年度からその香りを楽しむことが出来ることが分かります。
(6)はこの中では最も調子が悪い株です。原因は根腐れと思われます。今回は発芽した中で最も小さな苗まで植えましたが、初期成育不良のものは鉢上げの時点で処分した方が良いことは夜香木も例外では無いと言う事です。
現在の管理は日向に置いていて、鉢の表面が乾いた時点で水を与えています。根が回っていることから晴れた日は1日1回です。
2014年10月21日受粉の謎、解明
解説:冒頭で種子から育てる・・・とあったのでおかしな話だと思われた方もいらっしゃったかもしれません。一般的には挿し木1年苗が売られていることが多いからなおさらです。
私自身、以前に育てたときには、一切結実しなかったのですが、昨年、室内に取り込むときに良く見てみると、秋開花した後に白い小さな実が付いていることに気が付いた。その時は、どうせ冬季葉が徐々に落ちて完熟状態までは行かないと見ていました。ところがその予想に反して完熟した。それが実生紹介の始まりです。
と言うことは何らかの事情で花粉が雌しべに付いたと考えます。
夜香木の花は細長く、その性質から昼間は閉じているので一般的な昆虫では花粉を運ぶことは出来ません。また、ハチドリ、太陽鳥、こうもり等でも花が小さ過ぎます。それでは何が運んでいるのか思案の毎日でしたが、ある日帰りが暗くなってからになった時、花の周囲に茶色の虫が飛んでいることに気が付いた。直感でこれだと思い、改めて別の日に待ち構えて撮影したのでした。
(1)午後9時半過ぎ数匹の蛾が飛来しました。大きさは羽を広げた状態で3cm位。全体に薄茶色です。(2)(3)花を見極めて留まると、蝶と同じ様になっている口を挿入して密を吸っている様に見えました。
これならあの細い花でも花粉の移動が可能だと、腑に落ちて一件落着。
この様子を見ていると、狐は細長い壺に入ったスープは飲めないけれど、鶴なら飲めると言う話を思い出します。
以前は夏場3回、多数開花しても一粒も結実しなかったことを考えると、最近の高温傾向で今まで居なかった昆虫が進出してきたのかとも思わせます。
2016年5月9日生育開始
解説:(1)今年も無事越冬して生育を始めました。
夜香木は落葉樹では無いのに枝だけで葉が無いのは、寒さの影響も多少あったのですが、主な原因は水切れです。
今の鉢へ植えた直後は根が少なかったものの、秋以降は鉢一杯回ってすぐに水切れ状態になりやすく、冬季は水やり間隔が長くなりがちなのでつい、うっかり・・・と言った失敗を起こしやすい。
(2)寒さで枯れていない根拠は、枝の所々から新芽が伸び始めていることです。葉を落とした場合は、この様な芽の上で剪定を行う。葉を落としていなくても長く伸びた枝は適当な位置で剪定を行う。
(3)実生苗も同様で葉を落としていますが、親株と同様で生育を始めています。
両株共に今後植え替えを行って生育を促します。
現在の管理は、屋外日向に置いていて、土の表面が乾いたら水を与えています。
2016年6月2日生育進む
解説:最低気温が10℃以上になって生育が良くなってきました。越冬中で乾燥や低温で枯れこんだ枝は切り落とし、その後発生した芽は勢いを増してきた。
最近植え替えを行っていないのでこのタイミングで行いたいところ。葉を落としていることから、根鉢を崩して、1~2回り大きな鉢へ新しい土で植えれば良い。
(5)気温が上がってくると必ず発生するのがアブラムシです。植物の中には放っておけるものもあるが、夜香木に関しては駆除が必要です。本当は殺虫剤を散布したいところ。
粒状殺虫剤は駆除と言うより、忌避と言った感じなので、他の植物へ移動しただけで面白くない。
現在の管理は、屋外日向に置いていて、土の表面が乾いたら水を与えています。先月、今年最初の肥料を与えてあります。
2016年10月2日 今年最後の開花
今年最後の開花で、花に飛来した蛾の様子を詳しく取り上げます。
解説:(1)~(3)今季、最も花数の多い開花期を迎えました。写真は親木:1本と実生株12株です。枝が無秩序に伸びているため、どれがどの株からか分からない状況です。
(4)日が短くなったので、夕方5時30分頃になると咲き始め、それと同時に良い香りが強く漂い始めます。それと合わせるように蛾が飛来します。写真円内はその口の様子です。
(5)その蛾は花に止まって蜜を吸っている様ですが、写真は口を花に入れることに失敗した状態です。つぼみの外に口先が伸びていることがわかります。
(6)写真は花の中に口を挿入することが出来た状態です。この後、顔面が花にぶつかるまで押し込んで、またすぐに他の花へ移って行きます。以降、その繰り返しです。
これはこの花には蛾が満腹にならない程度の極少量の蜜しかないため、次々に移動しながら蜜を吸わなければならない。それで受粉が成功しやしくなると予想されます。
(7)開花後は多くの花は萼ごと落花してしまいますが、中には萼が残っているものもあります。これはこの後、果実が実る可能性があります。
これで蛾が蜜を吸うことで受粉が行われていると言うことは間違いないと説明出来ます。
(8)開花のピークをを過ぎて落花が多くなると初期に咲いた花の中で結実したものが確認できる様になります。(円内)
(9)当方では元々結実が少ないので、一箇所に山椒の様に結実することは珍しい。
現在の大きさは一粒が小豆大です。今後、数カ月かけて熟します。
現在の管理は、屋外のあまり日照条件の良くない場所に置いていて、土の表面が乾いたらと言うより、葉が萎れかけてきたら水を与えています。最近の長雨で枝の伸びは良い。先月、今年最後の肥料を与えてあります。
2016年11月5日 結実
今年最後の開花で、結実した様子を取り上げます。
解説:(1)気温が低下してきて芽の伸びは止まっています。この秋、最低気温が2℃まで下がった日もありましたが、霜害はありません。
しかし、夜香木を枯らす確率が高いのは、予想外の冷え込みで霜害や凍害に遭わせた時なので、これからが最も神経を使う季節になります。
(2)(3)10月に開花したときには毎晩比較的多くの蛾が飛来していたので、予想はしていたものの数多く受粉して結実しました。
これほどの結実は今までで最多です。
この実を熟させるには、冬期間緑色の葉を多く株に付けておかなければならないのですが、四方八方に伸びた枝を切らずに室内に置いておくことはどうなのか、ある程度割り切って考えなくてはなりません。
現在の管理は、屋外のあまり日照条件の良くない場所に置いていますが、春より根が回っているので晴れが続けば乾きやすい。よって、落葉させない様に水を与えています。