スモークツリーの栽培 2011年5月14日~
鉢植え栽培
このページではスモークツリーの鉢植え栽培を取り上げています。
毎年春の花が一通り咲き終わった後、あまり大きくない木の枝先に綿菓子の様なもこもことした花(便宜上)を見かけます。青空を背景にピンクや赤、灰色等のどちらかと言えば中間色の花が目に安らぎを与える。
堅い木と柔らかそうな花の対比や、大木にはならないこと、耐寒性が強く比較的丈夫なこと等魅力的な花木である。今月からこの木の栽培をエピソードを交えて紹介する。
解説:これらの株は実生5年目のピンク色系スモークツリーです。全て鉢植えで、今まで18cmポット植えだったものをこの春7号ポットへ植え替えたところです。
まず最初にスモークツリーには雄木と雌木があります。(1)(2)は雄木で5月になって花を咲かせたものです。雄花は花びららしきものが5枚あり、その内側に雄しべが5本出ていて先端部は花粉塊になっている。
この雄木は残念ながら開花後スモーク状にはなりません。(3)開花時、雌花が咲いていれば受粉させるだけのものです。その後は枝先に来年の花芽を形成し(外見では確認出来ないが)、晩秋に紅葉、落葉して1年を終えます。
(4)以降は雌木(雌花)で開花時期や花序は雄木と同じで、離れて見ると区別が付かない。主な特徴は雌花は雄花とは異なり雄しべは無く、花の中央部が最初から膨らんでいて先端部に雌しべが数本があり受粉適期には開いてくる。
これらの木はこの時同じタイミングで咲いていた雄花の花粉を付けている。
注意深く観察していると、その花粉は非常に細かく、例えば水やりで鉢が揺れたとします。そうするとその震動で花粉が舞う事が確認できます。そのことから、あえて筆などを用いて受粉作業を行わなくても自然に受粉が完了することが予想される。上の株については雄花を雌花に近づけて交配させた。その後交配した覚えのない雌花でも結実したことから、近くに雌雄揃っていれば、自然交雑が起こる。
(6)雌花はそろそろ花が終わったかな・・・と思う頃から果柄を幾つも伸ばし始める。矢印は果柄が伸び始めた箇所を記している。この後長く伸びてスモーク状になる。
(8)(9)この頃になるとはっきりと果柄が伸びていることを確認出来る。そして受粉がうまくいって鞘が膨らみ始めている。
(10)この頃には花びらは散って、鞘は更に大きくなり、果柄が1cm位に伸びている。
(11)(12)は果柄がきれいなピンク色で表面に毛が生えているのも確認出来る。鞘は更に大きくなってぶら下がっている。
2011年5月23日 害虫1・・・ミノムシ
2011年6月1日
解説:(1)これが我が家のピンク色系スモークツリーの樹姿です。日差しの関係で分かりにくいかもしれませんが、だいぶスモーク状になってきました。写真では良く見えませんが、下の方に伸びている枝先にも花が咲きました。
(2)(3)は上に伸びて咲かせたものです。スモークの伸び始めは赤色が強かったのが、しばらくして色が薄くなってきています。中にはクモが巣を張って、スモークなのか、クモの糸なのか分からない箇所もあります。ピンクスモークがホワイトスモークになってしまったのは問題ですが、重要なのは、スモーク状に見えることなので、あまり気にしていません。
(4)春に交配した後結実した種子が黒く変わってきました。(写真中央)この木を育ててきた一番の目的はこれだったので、落ちる前に収穫します。現時点では発芽能力を持った種子かどうか判断がつきません。来年の春播く予定です。その結果はまたこのページに掲載予定です。
(5)は我が家で最も樹齢の高いスモークツリーの雄木です。実生から7年以上経っています。丈は高くないものの枝が横に1m以上伸びて、枝数も増えて、鉢が立派なものだったら盆栽に見えなくもない。ちなみに今までわずかに間引き剪定を行ったのみで、基本的には放任栽培です。
今は枝先に役目を終えた枯れた雄花を付けて、日光を浴びて来年の花芽を付けるべく、枝を充実させているところです。
そもそも何故スモーク状にならない雄木をこれほど大きくなるまで育ててきたのかと言いますと、以前、某園芸雑誌のQ and Aコーナーで「スモークツリーの花を咲かせるには・・・」と言った相談が寄せられていて、その解答は「雄木でも雌木でもスモーク状になる。」、「花は咲かせても種子は実らない。」、「鉢植えならば大きいものに植え替えてみる。」等でした。
私はその解答を信じて「何か自分の管理が悪いのか・・・」と思いながら育ててきたのでした。それでも一向にスモーク状になる気配さえなく、時間だけが過ぎていったのです・ ・ ・。
その後他の手段でいろいろ調べて見ると、スモーク状になるのは雌木だけだと言う情報が複数得られた。それで改めて種子を播き、幾つか育てた中から今年初めて雌木が開花し、スモーク状になったことで、以前の園芸相談の解答が事実ではないことを裏付けることが出来たのです。
それにしてもその回答者は雑誌出版社からいくらかの報酬を受けているのであろうに、何といい加減なことかと、怒りを通り越して笑ってしまうほどです。この不満を、雄木を処分することにぶつけようかとも思ったものの、雌木だけでは種子を採ることが出来ないと言うことに気が付いたため、残すことにしました。
それと今までの経験で、調子よく育っていたものが急に原因不明の枯死になったことがあるので、我が家で絶えることのない様に複数残しているのです。
2011年6月1日 害虫2・・・アワフキ
2011年6月17日 種子の収穫
2011年7月1日 開花期を終えて
解説:(1)種子の収穫を終えた鉢植え雌木です。一般的な植物は夏場が最も旺盛に育つ時期ですが、我が家のスモークツリーは開花後動きが止まります。品種によっては秋まで枝を伸ばしスモークを形成するものもある。
(4)スモークツリーは他の花木の様な花芽を付けません。それは春になってまず枝をを伸ばして、それから花を咲かせるタイプの木だからです。よって、夏の間芽先付近に来年の花芽を形成しているのかどうかはっきりしません。
(2)(3)この株は今年初めて花を付けたものですが、開花後スモークが大きくなることなく終わってしまいました。今は枯れた果柄(花柄)が残っている状態です。白く見えるのはスモークではなく蜘蛛の巣です。
我が家は日照条件が良くないため花芽が充実していなかったと言えばそうかもしれません。
日照条件の良い場所では枝が太いのですが、この木は細いです。それは鉢植えと言う条件も関係あるかもしれません。今後施肥で株の充実を図る予定です。
2011年10月18日 秋が深まって
解説:(1)今月4日の朝は3℃台の冷え込みになって、それ以降木々の色づきが加速した感があります。我が家のスモークツリーも例外ではなく現在はご覧の状態です。
特に雄木の方は全体的に赤色に色づいて見事です。むら無く色づいている様は、ポインセチアを彷彿とさせます。これだけの紅葉ならば紅葉狩りに出かけなくても良さそうです。
ちなみに周囲の鉢植えはレモンです。
(2)こちらはまだ若い開花株ですが、色づきはまちまちです。写真では一株で赤と黄に色づいている様に見えますが、実は紅葉の株と黄葉の株を並べて置いてあるところを撮したものです。他にはまだ色づいていない株もあり、何故同じ場所で栽培していてその様な差が出たのか、私には説明が出来ません。
葉の緑色が失われてからは、土の乾きが遅くなって水やりの手間から解放されました。これで今年のこの木に対する世話は終わった感じがしています。
2012年4月1日 彼岸を過ぎて
解説:(1)(2)外はまだ冷たい風が吹いていますが、我が家のスモークツリー(無加温ハウス内)は芽吹きの季節になりました。先月中旬以降芽先がほころび始めました。
冬期間はほとんど日の当たらない所に置いてあったにもかかわらず、寒さの害は全く受けずによく枯れなかったものだと感心しているところです。
寒さで枯れなかった・・・とは、この冬は最近の暖冬傾向の中では冷えた方だったからです。2月に最も冷え込んだ日は-14℃位まで下がったので、鉢植えをそのまま置いてある場合、元々耐寒性が強い植物でもたまに枯らすことがあるから心配していました。
ところが3月に入って日差しが強まり、それに伴いハウス内気温が上昇するようになったら休眠から覚めた様です。ちなみにこの冬一本も枯らした株はありません。めでたし、めでたし・・・。
後は、もう少し良い花を期待したいところです。クモの援助を受けなくてもスモークになる様な・・・。
(3)(4)これくらいの芽吹きで花序が確認出来る様になります。
(5)昨年収穫した種子を播きました。発芽能力のある種子が採れたのか自信がありませんが、とりあえずしばらく様子を見てみます。
2012年5月1日 桜が咲いて
解説:(1)~(4)今年も開花の季節がやってきました。雄木は咲き始め、雌木の早い株はスモークが伸び始めています。
(5)4月8日頃、最低気温が-5℃近くまで冷え込んで、この一株だけ凍害を受けて各枝の頂芽が傷んでしまいました。
他の株は何ともなかったので、同じ場所へ置いていて何故この株だけ傷んだのかが未だに謎です。しかし、幸いなことに木そのものは何ともなくて脇芽が伸び始めています。
(6)~(8)は購入苗でスモークの色が緑、ピンク、濃いピンク、赤茶色の4種類です。それぞれ挿し木苗ですが、その中で花を付けているものもあります。
すでにあるのに購入した理由は、スモークの状態を確かめるためです。我が家の条件では日照時間が少ないため花芽が充実しない。それでスモークが密にならないのか、その株の性質なのかです。
2012年5月6日 「雌木のみがスモークになる」の補足
解説:このページでスモーク状になるのは雌木だけと記載していますが、おもしろい木があったので紹介します。
(1)は実生6~7年位のピンク系開花株です。今年の花が終わりに近づいています。
(2)は左側が雄花を付けた枝で、右は雌花と雄花の両方を付けた枝です。右はスモークが伸び始めている。に対し左は見られません。
(3)はその雄花の花序です。いくらかスモークが伸び始めてはいますが、長く伸びてはいません。背景は雌花を含んだ枝です。
(4)写真中央は雌花です。雌しべが突き出ています。この花序は幾つかの雌花があって、その他は雄花です。ところがスモークは全体的に伸び始めています。
現在この株以外にも開花中でその中に雄木もありますが、今のところこの木は結実までは至っていません。
後の観察からこの木は両性だと分かりました。しかし、木全体でスモークになるのが一枝(限られた枝)だけだとすれば、鑑賞価値の低いものであることに違いはありません。
2012年6月1日 園芸品種と続「雌木のみがスモークになる」の補足
解説:(1)今年購入した園芸品種が見頃に近くなったので紹介します。やはりスモークが多いです。この木はまだスモークが伸長中でこれです。完全に伸びたらかなりの煙たくなるでしょう。?!
これを見る限りスモークツリーは種子ではなく、園芸品種を購入した方が良さそうですが、話はそう単純ではありません。それは同じ条件で育てていないからです。
もし、来年も同じ結果だったら園芸品種に軍配が上がります。
(2)は先月ご紹介した両性株のその後です。左手前の枯れた花が雄花を付けた枝で、奥のスモークに見えるのが雌花を付けた枝です。この枝のスモークは現在も伸長中です。
今までの経過をまとめますと、雄花は開花後、雌花と同じように数㎜スモークを伸ばしたもののその状態で枯れてしまいました。一方、雌花の方は普通の雌花の様にスモークが伸びて現在に至っています。
2012年6月15日 園芸品種の様子
2012年8月1日 園芸品種の様子
2013年6月4日 実生のその後
2013年9月1日 実生のその後他
2014年4月6日 鉢上げ
2014年7月14日 開花
解説:(1)成育中の実生苗。(2)(3)は小さい方の苗ですが、夏になって伸び始めた芽先には花を付けました。
ただ、残念ながらこの花は雄花でスモークにはなりません。
この様にスモークツリーは花木としては早く花を付けると言うことが分かります。実生でこれなので、一般的品種の挿し木1~2年苗なら初年度から花を付けてもおかしくありません。よって、高いお金を払って大きな木を買う必要は無いと考えます。
以上、実生を掲載してきましたが、種子を採取して播くなんて面倒だと言うなら放置しておいても幾つか苗を得られます。(4)は昨年結実した種子が自然に落ちて越冬して発芽してきたものです。
この鉢内に4~5本生えています。とりあえず今年はこのまま育てて翌年1本ずつ鉢上げすれば良い。
2014年9月4日 秋開花
解説:写真は園芸品種‘グレイス’で秋になって再び咲いたものです。スモークが密ではないのは栽培条件の影響です。日当たりの良い場所ならもっと綿菓子の様になります。
考察:今まで複数の品種を育ててみましたが、鉢植えで育てるならこの‘グレイス’がお勧めです。
それは花序が大きくて立派なことと、好みはありますが、スモークの色がはっきりしていることからです。
一般的に花木は鉢植えで栽培するとどうしても花が小さくなりがちで、スモークツリーの他品種でもその傾向が見られます。しかし、この‘グレイス’に関してはそれを感じさせない。鉢植えでも立派な花序を付ける。
管理面は各品種共通ですが、夏場適当に肥料を与え、水切れにならない様に注意していればそれだけで良く育つ。冬場は耐寒性が強いので放任に近く管理の手間から開放されること。
その他、病害虫が少ないこと、苗から開花までが早いこと、値段が比較的安いこと等から園芸初心者が手懸ける場合でも相応しい。