有星類の実生
1,兜 2011年8月30日
このページでは有星類の播種から小苗までを取り上げています。
サボテンと言えば西部劇で出てくる円柱状で所々枝分かれしているものか、球状で多くの棘を生やしているものか、ウチワサボテンを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
その多くは葉が無くて棘があることが特徴ですが、中にはその特徴である棘が無いものが存在します。その代表的なものがアストロフィツムです。
今回はその中で代表的な兜(左画像)とランポー玉の種子からの栽培を取り上げます。
解説:(1)はネットオークションで手に入れた兜の種子です。一般的な植物の種子とは異なり、粒と言うより殻と言った印象で、本当にこれで芽が出るのかと思わせる。
(2)は平鉢と受け皿を用意する。受け皿は播種後腰水管理のため。尚、鉢と受け皿は再使用のためきれいに洗ってある。
(3)用土は理論的に無菌で無肥料の粘質土小粒に完熟堆肥を極少量混合したものを用いた。これを鉢の高さの7~8割ほど入れて均してある。鉢底にごろ土は入れてない。
(4)なるべく種子が重ならないように撒いたつもり。覆土はしていない。この後受け皿に水を張り鉢を置く。これで用土に吸水させるのが一般的だが、時間の都合で上から柔らかい水をかけて湿らせた。この後、鉢に料理で使うラップをかけて湿度を高めることにした。尚、種子は殺菌剤をまぶしたり、散布等は一切行っていない。
この後、屋外ハウス内に置いて、日よけとして上に新聞紙を2枚かけておいた。
水やりは一度用土が十分湿っていれば、しばらくは不要。
※理論的に無菌とは、購入した新しい土を初めて使うと言う意味で、熱湯や蒸気、薬品等で殺菌は行っていない。
2,ランポー玉 2011年8月31日
2011年9月3日 発芽始まる。
2011年9月6日 出揃う。播種後1週間
解説:(1)はほぼ出揃ったのでラップの両側を鉢の縁から外して空気が通るようにした。この鉢も台風が近づいてきたので室内で管理を行っています。それで窓ガラス越しの弱い日光が当たって、実生苗は鮮やかな黄緑色に輝いて見えます。(2)(3)
実生苗の根元に見えるカビのようなものは根毛です。未発芽の種子はカビが生えているものもあります。
(4)ランポー玉の方も少し通気を良くしてやろうと思って見てみたら、ラベルを立てていたのですでに空気が通っていた。
(5)こちらも大体出揃って、黄緑色に変わってきた。やや、紅色がかったものもある。やはり根元に白カビの様に見えるのは根毛です。
両方共に出揃ったことを確認したため、受け皿の水は取り除いた。今後、徐々に外気と日光に慣らしていく予定。
2011年9月17日 移植。播種後19日
解説:(1)窓越しの日光を受けて必要以上の高温になることを避けるため、ラップを少しずらして換気を行っています。(2)種子は重ならないように播くと言っておきながら、結構密集してしまったことから移植を行いました。方法は後のランポー玉の通りです。
(3)こちらもラップをずらして換気しています。こちらは色が赤褐色に変わってきている。(4)は移植前の状態。大体適当な間隔で芽生えてきましたが、所々近いところがあったので、それを一箇所一本にしました。
(5)まだ小さいのでピンセットで草体をつかんで引き抜いて、同じ鉢内の移植先に適当な下穴を空けて、そこに苗を置いて周りの土を少し押さえて落ち着かせた。(6)は移植後。各苗は適当な間隔になった。
各苗、水やりは土の表面が乾く前に受け皿に入れて底から吸わせています。余った水はそのまま吸わせて無くなったら土の表面を見て少なそうだったら同じ様に与えるようにしています。
日光はざらざらしたガラス戸、網戸、又はレースのカーテンを通過してやや弱まったものが当たっています。
現在、カビが広がったり、悪い病気は出ていません。芽が出てから枯れたものはほとんどありません。
元肥、追肥は与えていませんが、土に混ぜた堆肥が栄養源になっています。
発芽率は予想より高く、悪いものでも60%、高いものは100%近いものもあります。現在発芽中のものもあるので、確定にはもう少し時間が掛かります。
2011年10月1日 播種後約30日
解説:各鉢ラップに穴を空けたり、めくったりして以前よりは通気を良くしている。
晴れた日は窓ガラス越しの日光が当たっている。水は鉢土表面が乾き始めた時点で受け皿に給水している。
兜の駄温鉢は乾きやすいものの、ランポー玉のプラ鉢は乾きにくい。
各苗共に遅れて発芽したものも小さな球状になってきた。
(1)(2)兜は全体に緑色の個体が多いに対し、(3)(4)ランポー玉の方は茶褐色で頂部が白っぽく変わってきた。大きさは発芽当初よりは育っているが、形が変わらないのでいつも同じ様に見えている。
発芽後、種子の殻が土の表面に落ちてその後カビが生えたが、取り除いたりしていない。それでも気が付いたときには消滅していた。もちろん苗が腐ったりしていない。今のところ順調です。
2011年11月1日 播種後約2ヶ月。
2012年4月1日 播種後約7ヶ月
2012年8月1日 播種後約11ヶ月
解説:(1)梅雨明け後、晴天が続いて土が乾きやすくなっています。毎日ではないものの、週に数回与えることもあります。
肥料は与えていません。播種時に混合した完熟堆肥が効いています。
置き場所はビニールハウス内で雨は当たりませんが、日光は強く当たっています。
(2)忙しいときはほとんど観察せずに水やりだけの毎日でしたが、写真に撮ってみるとそれぞれが大きくなっているのが確認出来ます。色は相変わらずに赤茶色ですが、刺座や棘を確認出来る様になりました。
(3)ランポー玉の方ははっきりと形を確認出来る様になりました。ここまで来れば間違いなくランポー玉です。梨子地に稜がはっきりと分かります。
(3)このランポー玉は‘5稜’として出品されていたものを入手したものですが、実際には4稜のものが多い。わざと混入させていたのなら悪質ですが、たぶんそうではないと思いますので出品者はさすがに素人園芸家らしいなあと思わせます。後日同一人物から落札した同種種子でも同結果で、困ったものです。
最初から3~5稜混合種子で出品していれば問題では無いと言うことです。
この程度ならまだ可愛いらしい方で、植物種子オークションを見ていると明らかに個人輸入で入手した種子を小分けして出品していて、ノークレーム、ノーリターンと謳っているものがある。しかも、育て方は自分で調べてくれときたもんだ。
これは責任の所在がはっきりしないので、間違っても手を出してはならない。
2012年12月1日 播種後1年3ヶ月
解説:(1)11月に入って少なくても4日以上氷点下の冷え込みになったので、その時は断熱シートを掛けておいて、サボテンより寒さに弱い植物を加温ハウスや室内に収容してから、これら実生苗を室内へ取り込んだ次第です。
(2)色は赤っぽいですが、刺座でたくさん生えていることが確認出来ます。こうやって見てみると、間隔が狭いところもあって育っていたんだと思わせます。
来年植え替えるか迷うところです。
(3)印象ではとりあえずランポー玉と言った感じの草姿になりそうです。つまり、良い系統ではない一般的なものです。今回は種子から育てることに意義があるので、言及しないことにします。
現在の管理は室内の日光が当たる場所において、後は放任です。
2013年9月1日 播種後2年
2014年5月26日 播種後2年半以上過ぎて
解説:気温が上がって成長期に入ったので、鉢上げを行いました。
(1)(2)は兜の鉢上げ前。(3)(4)は鉢上げ後。苗がまだ小さかったので、一辺が3cm位のトレーを使用しました。
昨年より数が減ったのは水やり過多で腐らせたためです。それで実際に鉢上げ出来たのは、十数株です。
(5)(6)はランポー玉の鉢上げ前。(7)(8)は鉢上げ後。こちらは6cmポットを使用しました。改めてよく見てみると、ほとんどが四稜で少し五稜がある程度です。その他、白い毛の多いものも混ざっています。それで稜で分けても意味が無いため、大きい順に鉢げしてあります。
最低気温が二桁の日が多くなったこと、他のサボテンが生長を始めたことを確認してから今年最初の水を与えた。その後、球体が水を吸って膨らんだことを確認してから、鉢上げを行った。
今後、活着したら施肥の予定です。
2014年10月14日
2016年5月9日
2016年8月12日
解説:(1)現在残っているのは2株だけとなりました。兜は他のサボテンと比べて根が弱く、ちょっと水が掛かりすぎたことを見逃してくれない様なところがあって、だいぶ根腐れで枯らしました。
(2)ランポー玉の方は精神的に楽で、適当にやっていてもそれなりに育ってくれます。自然の雨に当たっても問題は発生していません。ただ、商品として売るなら肌に傷が付かない様に、また形が歪にならない様に気をつけなければなりません。
(3)その様な中、初めてつぼみを付けた株が現れました。現時点では2つ見えますが、開花まで至るか分かりません。
現在の管理は、屋外日向に置いていて、土が乾いてから水を与えています。植え替えや夏になってから1回施肥済みです。
2016年8月16日~23日
解説:(1)もう、いつ種を播いたのか忘れてしまったほどですが、ようやく最初の花を咲かせました。おなじみの薄い黄色の花です。
他に同じ稜の株が咲いていれば交配を行ったのですが、これだけでしたので、1日咲いて終わりました。
(2)2番花はだめかと思っていましたが、咲きました。ただし、初花よりやや小さかったです。こちらは天候不順だったので1日半から2日咲いて終わりました。
この株の左側の株もつぼみが膨らんできたので、間もなく開花する見込みです。
(3)このグループは比較的根が丈夫なので、あまり根腐れは起こさなかったのですが、それでも少数だめになった株がありました。
兜なら枯死ですが、ランポー系なら、下半身はだめになっても上半身は助かって、倒れていますが、新たに根を伸ばして現在は根付いています。次の植え替えで真っ直ぐに植える予定です。
※これで開花まで来ましたので、終了します。今後は部分更新になります。