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極楽鳥花植物園 Strelitzia Botanical Garden

落葉果樹の接木 このページでは園長による趣味のガーデニングを取り上げています。

落葉果樹の接木 2010年6月4日~

西洋梨

(1)用具他

(2)穂の保存

(3)接ぎ穂

(4)穂木の様子

(5)穂のカット

(6)穂の調整

(7)台木

(8)切断

(9)切り込み

(10)挟み込み

(11)結わえる

(12)終了

このページでは西洋梨の接ぎ木を取り上げています。

「レモンの実生」ページでも記載していますが、一般的に果物の種子を蒔いても、食べた果実と同じものが実るとは限らない。どちらかと言えば全く違うものが実ることが多い。それは果樹苗生産は接ぎ木で行われることが多いからです。

接ぎ木で生産される果樹苗:ぶどう、柿、キウイフルーツ、栗、リンゴ、すもも、桃、プルーン、ビワ、なし類、梅、杏、さくらんぼ、柑橘類。挿し木で生産される果樹苗:ベリー類(小果実類)。

そこでどうすれば良いのかと言えば、その品種を接ぐことです。下記に紹介する。

※接ぎ木をする理由は専門書物をご参照下さい。

  • 解説:以下必要なもの、準備等。
    • (1)は必要な用具で上から切り出し(ナイフ)、剪定ばさみ、接ぎ木テープ。
    • (4)は接ぐ方の木(西洋なしの枝)で穂木と呼ぶ。これは冬の休眠期に採取し長さ15~20センチに切って、乾燥防止の目的で湿らせた新聞紙に包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫で保管してあったもの。(2)(3)この穂木は3月上旬に採取したもの。当地方は寒冷地なので、これでも間に合う。暖地ではこれでは遅いと思われます。
    • (5)は一節ずつカットし、(6)は切り出しで穂の下部を楔形に切り整えたもの。
    • (7)は台木でこの木の正体は「マルメロ」です。これは西洋なしの種から地植えで3~4年育ったものです。マルメロとはバラ科の秋に黄色で独特の良い香りを発する、生食には向かない果樹のことです。最近では西洋なしの台木に広く用いられているので、実生でマルメロが出てきたものです。台木の太さは鉛筆より少し太い位です。
  • 時期:一般的には冬季の終わり頃。台木が樹液を吸い上げる直前と言われている。しかし台木が水を吸い上げ始めても(成長が始まっても)行える。
  • 接ぎ方(切り接ぎの方法)
    • (8)台木の適当な位置で水平に切断する。(9)接ぎに切断面上部から、木質部に少し掛かる位置に、穂木が入る位の深さ(1.5~2センチ)に切り込みを入れる。
    • (11)位置が決まったら接ぎ木テープでしっかり結わえる。この時穂木がずれない様に注意する。また、雨が染みこまない様に幾重にも巻く。また、穂木が乾燥しない様に穂木の上もテープを巻いている。(12)終了。
  • ポイント  
    • 水を吸い上げ始めた台木(休眠から覚めた台木)に、休眠中の穂木を接ぐと成功の確率が高い。穂木の採取時期、接ぎ木の時期が重要になる。
    • 穂木と台木の接する箇所を平らに調整する。これには良く切れる刃物を用いることが重要になる。
    • 台木の形成層と穂木の形成層が一致すること。
    • 接ぎ木後テープでしっかり固定すること。また、水が染みこまない様にすること。
    • 接ぎ木後穂木に触れてずれない様に注意すること。

※台木は食べた果物の種を播けば手に入れることが出来る。穂木は冬季(休眠期)に知り合いの方や、農家に頼んで入手し、上記の通り保存する。

2010年5月16日 芽膨らむ。

芽の様子

解説:成功したらまもなく芽が動き始める。この時点ではまだ芽が尖った程度。

2010年5月21日 芽先、ばらけ始める。

芽の様子

解説:更に芽が伸びて葉がばらけてきた。台木にも動きがあり、節から芽が出始めている。この時にこの脇芽は取り除く。左手前は失敗で芽の動きが見られない。

2010年5月30日 葉が展開し始める。

(1)芽の様子

(2)台木の様子

解説:(1)葉が展開した。これで後は害虫にやられない様に育てれば良い。

(2)は失敗した方の様子。台木から脇芽が伸びている。もし、穂木が残っているならば、改めて接ぎ直せば良い。

2010年6月11日 枝を伸長し始める。

芽の様子

解説:今までは葉が数枚展開するだけだったものが、ここへ来て枝を伸ばし始めた。ここまで来れば特別なことがなければこの接ぎ木は成功したと見て間違いない。

主な作業は台木から伸びた芽のつみ取り。及び周囲の雑草取り。

2010年6月18日 勢い良く伸び始める。

芽の様子

解説:経過報告です。穂木から出た芽は10cm位まで伸びている。梅雨に入って気温が安定してきたことから、生育が良い。春から初夏にかけて蛾の幼虫による食害を受けやすいので要注意。

2010年7月1日 旺盛に伸びている。

芽の様子

解説:気温が高めで安定したことから、芽の伸びは旺盛。新梢の長さは37センチに達した。この場所は日照条件が悪いため、やや徒長気味である。

この時期は害虫に狙われやすいものの、今のところ無農薬で育っている。今後施肥とまとまった雨で更に伸びることを期待している。

台木からは度々芽が出てくるので、欠いている。

2010年8月1日 一旦休止。

芽の様子

解説:先月、穂木から伸びた芽は50センチに達したところで、動きが止まった。ここへ来て再び芽先が動き始めたので、秋になるまでにもう少し伸びるでしょう。

薬剤散布を行っていないので害虫が付いて葉が傷んでいるところがあります。本来は定期的に薬剤散布を行わなければ木が持たない。

2010年12月1日 落葉。

(1)全体の様子

(2)元の様子

解説:結局夏以降生育することはありませんでした。その理由は害虫が付いたことと、日照条件が悪い場所だったからです。

11月に数回氷点下に冷え込みに遭って葉を落としました。これで越冬となります。

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